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20160731

高江ヘリパッド>エセアセス、N1道はアトダシデス

3行でわかるサクッとの感じで。

◉オキボのアセスに法的根拠なし。
◉エセアセスもない後出しN1作業道。
◉第1回ワーストアセスコンテスト受賞作。


以下、もうちょっと丁寧に。

(1)高江ヘリパッド建設は法的に根拠付けられたアセスを実施していない。
(2)N1の作業道は後出し。エセアセスすらやっていない。
(3)ワースト・アセス・コンテスト
(4)エセアセスを放置した結果として、どのような事態を招いたのか。


(1)高江ヘリパッド建設は法的に根拠付けられたアセスを実施していない。
 アセスメント専門家界隈では、建設ありきの、工事計画のほうにアセスをあわせる「アワセメント」という語が飛び交っておりました。泡瀬干潟をめぐって、語呂が宜しいということでしばしば聞かれる言い方です。
 高江ヘリパッド建設については、それすらなされていません。オキボが「県条例に準じて」なにかやったらしいのですが、これがいつしか「自主アセス」と呼ばれるようになっています。肯定的な意味に聞こえるので、「そいつはニセモノだ!」ということで「エセアセス」と呼ぶようにしています。エセです。似非。
 で、なぜ法に則ったアセスがなかったのか。そのチープなカラクリはこうでした。
①国のアセスメント法の適用規模ではない。
②県のアセスメント条例はといえば、管制塔、誘導路ほか施設がないので「ヘリポート」ではない、だから適用対象ではない。こんなコリクツを当時の沖縄県政が追認しました。
▶沖縄県環境影響評価条例については「あらまし」を参照。要点をまとめたパンフレットが参考になります。裏表紙にはやんばるの森とやんばるクイナの写真が・・・。泣けるねえ。
http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/seisaku/hyoka/documents/kankyoueikyou-pamphlet.pdf
③それなのに、予算はしっかり使ってアセスの体裁だけは整えた。後日談として、防衛省天下りアセス業者の問題も、報道されましたねえ・・・(遠い目)。

 多くの人を唖然とさせたのは、法に基づくアセスの基準となる「規模」を直径75mのヘリパッド一個で考えたことです。バカじゃないのかしら、と思うが、そのような仕事ぶりでした。いかに国が沖縄を軽視しているか。そして軽視されている沖縄の行政がこの枠組みに便乗したか。透けて見えます。後日、「環境に配慮して直径を45mにした、周囲を15mの無障害地帯で囲む」と発表されました。45mの円形を15mの帯でぐるり囲んだら、あんた!75mやないの結局、という詐欺ぶり。
 オスプレイ配備隠しの問題、それ以前に運用をアセスしないでよしとしたことの罪は重い。直径75mのなかだけでヘリが飛ぶわけでもあるまい。複数箇所を行き交い、「地形飛行」という超低空飛行の訓練にさらされている場所です。

(2)N1の作業道は後出し。エセアセスすらやっていない。
 体裁だけ整えたエセアセスですが、何しろエセなので、穴だらけでした。ヘリパッドGから宇嘉川河口の提供水域に向けて「歩行ルート」なる米軍訓練用の道を、後から慌てて追加しました。さらに後から発覚したのが、N1予定地に向かう作業道でした。そう。いま、まさにジャリが運び込まれているその道は、アセスすらしていません。
 これを即座に厳しく追及し得たのは、情報公開請求の鬼、当時沖縄大学教員だった土田武信さん、そして「騙されない」人、真喜志好一さんらの集めた膨大な資料と解読のおかげでした。
 なんでこんなことになったのか。アセスを法外にしたカラクリに、当然、関係があるでしょう。「ヘリパッド」は「ヘリポート」のような付帯設備のない「パッド」だけだから、アセスは不要、となりました。だから「道路工事」があると、コリクツが破綻すると思ったのでしょうか。それとも、本気で、山のなかに突如、円形の造成地を建設できると思ったのか。道一本付けるだけでしょ、簡単じゃん、と思ったのか。
 2007年3月、住民は防衛局でこれを問い質しました。
 「道はあります」というのが、防衛局の言い分でした。だから環境は改変しない、「枝を払ってじゃりを敷くだけ」、木は一本も切らない、と。「えー?」と、現地を知る地元の人間は驚きました。(この時の記録をもうひとつ追記「沖縄・辺野古海上基地の問題を中心に maxi's_page」から。http://blogs.yahoo.co.jp/okinawa_maxi/48249482.html
 N1作業道は、そういう意味で、はじめっから法外な無法者の仕業の、象徴でもあるのです。今、まさに「枝を払ってじゃりを敷くだけ」のために、数百人という機動隊を投入して戒厳令下に置き、作業が再開されたところです。

 ね。みんなで頑張って止めましょう。

 ジャリで埋められ切断されていくやんばるの森は無言です。でもその声が人間に届くように、専門家たちが耳をそばだて目を懲らすのです。自然環境は、いったん破壊されると修復が困難だから、経験から学び想像して行動するのが人間だから、未然に予想して食い止めるのが、本来の「環境アセスメント」倫理なのです。国はこの倫理を踏みにじり台無しにしました。
 さらにこれが法に基づかないということは、どういうことか。手前勝手にやっただけだから「間違ってる」「やり直せ」と指摘しても、やってないものだから、やり直しも指導もできませーん。と、こういうことになってしまいます。県は、コリクツを容認した過去を、いまだに修復できずにいます。昨年の県議会軍特委でも陳情に対する処理で、「ヘリパッド、いわゆる接地帯のみの移設事業」だから県条例アセスの対象ではないとの言葉を繰り返しているのです。
 無法は、それを許す環境があるから幅をきかせます。でも沖縄で私たちは民主主義を重んじるので、許しません。文書を集めて、正しい仕事をするよう行政を監視する。チョイさんの沖縄日記が詳しく解説しながら進めてくれているのは、まさにこの作業です。N1作業道に関しては、すでに昨年、2015年に県の環境影響評価審査会で問題として指摘されていて、現在の動きは、こうした積み上げの上にある、という訳です。

 無法を許さない、許さないための積み上げを無駄にしない。このような取り組みも、現地での座り込み、阻止行動があってこそ活きるのです。ぜひ、みんなで参加してやんばるを一緒に守りましょう。

 改めて2007年の環境影響評価図書を眺めて見ると、アセスいらずの「パッド」論と、N1作業道とG歩行ルートの後出し、この組合せの引き起こした矛盾は、深刻です。
 このように、気になったときにいつでも文書を再確認できるようにネットに保管してくれているのが、「さい塾」です。高江座り込みの初期を体験した学生たちが起源となって情報公開を追求する運動を展開しています。文書を丁寧に読み込んで、ヘリパッドの位置の選定が環境影響評価を裏切る恣意的内容であると析出しました。
▶「北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)環境影響評価図書」(2007年2月、那覇防衛施設局作成)
http://www.saijuku.jp/site/document_japan/index.html

それにしても膨大な文書なので、門外漢は、ついつい最初のところばかり注目してしまいます。こんなことが書いてありました。
第2章
2.1 事業の名称
 北部訓練場ヘリコプター着陸帯移設事業(仮称)
2.2 事業の目的
 沖縄県には・・・(前半は省略します)・・・SACOの最終報告では、沖縄県及び県民の強い願望を受け、米軍の理解により意見の一致が見られた北部訓練場(約7.500ha)の過半(約3,987ha)について、ヘリコプター着陸帯を返還される区域から北部訓練場の残余の部分に移設するとともに、進入路等支援施設を整備することを条件に返還されることが示されており、今後、ヘリコプター着陸帯の移設が計画されることとしている。
 以上のことから、本事業は、ヘリコプター着陸帯を移設し、北部訓練場の過半の返還を実現させるため、当該ヘリコプター着陸帯の移設及び進入路等支援施設の整備を行うものである。
2.3 事業の種類
 ヘリコプター着陸帯移設
おやおや。という部分にアンダーラインを引きました。この文章は、その後も今日の事後報告書にまで引き継がれているのですが、改めて読み直すと、むむむ。です。比べるために、SACO最終報告の北部訓練場に関する記述は以下のとおりです。
SACO仮訳(外務省サイト)からコピぺします。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/saco.html
北部訓練場
 以下の条件の下で、平成14年度末までを目途に、北部訓練場の過半(約3,987ヘクタール)を返還し、また、特定の貯水池(約159ヘクタール)についての米軍の共同使用を解除する。
・北部訓練場の残余の部分から海への出入を確保するため、平成9年度末までを目途に、土地(約38ヘクタール)及び水域(約121ヘクタール)を提供する。
・ヘリコプター着陸帯を、返還される区域から北部訓練場の残余の部分に移設する。
そう。「進入路等支援施設の整備」は、SACO最終合意の返還条件ではありません。これは、SACO合意の後、1999年日米合同委員会のなかで後付けで出て来た部分なのです。「進入路等支援設備」が具体的にはどれを指すのか、はっきりしません。Gと宇嘉川河口を結ぶ後出し歩行ルートのことか、Gまでの舗装道を付ける工事のことか。そしてN1作業道は、「進入路等支援設備」なのでしょうか。工事が終われば元に戻すのか?米軍が流用するんじゃないのか?という疑惑が報道でも浮上しています。
 未だに県も「接地帯」の工事だけだと、言っていますが、県の環境影響評価審査会に提出されている防衛局の資料はどうなってるんでしょうか。見て見ましょう。
平成27年度沖縄県環境影響評価審査会の資料はここにあります。
http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/seisaku/hyoka/shinsakai/h27.html
例えば第4回に、北部訓練場の着陸帯工事が議題に上がっていて資料があります。
http://www.pref.okinawa.jp/site/kankyo/seisaku/hyoka/shinsakai/documents/h27_4th-shiryou.pdf
事業内容:ヘリコプター着陸帯(6カ所)の移設及び進入路等支援施設の整備
おやおや。こっちでは、「パッドのみ」じゃないことに、なっていますね。「及び進入路等支援施設の整備」という語が付け加わっています。しかし「進入路」の項目にはN1とは書かれていません。ただ、添付された地図にはやけに目に付く「工事用道路」の黄色い線・・・。

 アセス逃れの産物であるN1作業道に、現地を熟知しない見当違いの判断が重なり、「枝を払ってジャリを敷くだけ」のつもりで事を進めた結果、立木伐採に必要な手続きもない、赤土対策もない、そして現場は戒厳令下の封鎖状態。そもそも、条例に基づく行政監督監視の下のアセスとしなかったことに、最初のボタンの掛け違いが、あると見るべきではないでしょうか。
 「もう一度アセスからやり直せ」。2007年には、その抗議にも少しは説得力がありました。でも今となっては、「そんなアセスをするヤツぁはそもそも信頼できない、工事はダメ」が、2016年の当然の結論ではないでしょうか。

(3)ワースト・アセス・コンテスト
 そんなアセスが賞を取っています。その名も「ワースト・アセス・コンテスト」。
 大賞は惜しくも辺野古のアセスに持って行かれたのですが(エセだから、仕方あるまいね)、特別賞が授与されました。資料などが充実しているので、ぜひチェックしてみて下さい。
▶ワースト・アセス・コンテスト
http://bead.mimoza.jp/


(4)エセアセスを放置した結果として、どのような事態を招いたのか。
このエセアセスのプロセスに関わった全ての人に読んで欲しいと思います。
▶東村高江の現状BLOG「高江でオスプレイはどのような飛び方をしているのか」2016年7月29日。
http://takae.ti-da.net/e8836074.html
補足する内容として、次のまとめも参考にして下さい。
▶「高江ヘリパッド>騒音、低周波について」
http://www.projectdisagree.org/2016/07/blog-post_26.html

そして、怒りとともに、2007年のエセアセスから、住民意見に対して回答した部分を抜き出して以下に貼り付けておきます。「環境省の指針値を満足しています」「生活環境に及ぼす影響は軽微であると考えられます」などと繰り返す形式的な回答を、当時もそうでしたが、今となっては平静な気持ちで読むことなど出来ません。

2007年ヘリパッド環境影響評価図書4章19頁。